遅ればせながら地中美術館。

宿題であった地中美術館について。
そもそも地中美術館は、ベネッセコーポレーション会長(進研ゼミで有名)である
福武聰一朗氏を主体とした「直島アートプロジェクト」の一環として建設されています。
氏が「瀬戸内の直島を、世界に誇れる自然と文化の島にしたい」という思いを持って、建築家安藤忠雄を訪れたのを事の発端として、ベネッセハウス(1992)→家プロジェクト(1997~2002)→地中美術館(2004)、と島のアート事業化が進んでいるようです。

地中美術館は既存の美術館と大きく違い、ある特定作品のための展示空間になっており、実際展示されているのはたった3つだけ。各々空間とは切って離せ得ない関係となっており、
・クロード・モネ室(「睡蓮」を展示)
・ウォルター デ マリア室
・ジェームズ タレル室
と、このように作家の名前で展示空間が呼ばれています。

ではそれぞれの作品はどのようなものなのか、
行った体験を基に書いてみます。

まず地中美術館は、その名のとおり建物の大部分が地中に埋められており、またそれ自体も芸術作品の一部とされているため、全くの撮影禁止。よってこれが「地中美術館です!」と言えるような写真は無く、やっと撮れたのがベネッセハウスから遠景で撮影したもの。
「人間の心や精神の大切な所が表には出ないように、建物が外から見えないよう安藤さんにお願いした」と福武氏。なんとなく、ドラえもんで氷山の中に住居を作って、その中でのび太らが暮らすという話を思い出した。
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美術館のエントランスを入っていくと、どうにも日常では味わえない建物のスケール感。巨大なヴォイドにまとわりつくような階段をおりて、各展示室へ向かう。安藤氏特有のコンクリート空間から次第に白い空間に。スリッパに履き替えてモネ室に向かう。ぼんやりと暗く、尚かつ天井、壁、床と真っ白なので遠近感が分からなくなる。しばらく歩くと斜め方向に壁が建ち、次なる室への四角く切り取られた入り口が。
白い空間・進行方向と斜めの壁・切り取られた入り口の向こうに見える明るい場所。少ない空間要素の組み合わせだが、完全にスケール感が狂ってしまった。そしてモネ室に入場。やはり真っ白な空間に、色の深い水面が描かれたモネの「睡蓮」が展示されている。床は2㎝角の白いモザイクタイルで、歩き心地が柔らかい。先ほど履き替えた裏地の柔らかいスリッパがその感覚を助長する。採光は自然光のみだが室全体が光に満たされたような空間。安藤氏の「モネを体全体で味わって欲しい」とでも言いそうな、明確な意図を感じる。地中美術館の「睡蓮」は、モネ自身が円形の空間に展示される事を想定して描き、オランジュリー美術館に設置される事となった一連の「睡蓮」と同時期に描かれ、モネ自身「大装飾画」と呼んでいた作品である事が、この作品の為に特別な空間がつくられた理由たらしめているのだろうか。
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白い空間に少し目眩を起こしながら、タレル室に向かう。
タレル室には3つの作品がある。それぞれについての説明や感想など。
「アフラム、ペール・ブルー」>室の隅部を利用し、光の照らし方だけで立体的なキューブを浮かびあがらせる。最初に展示されており、次の作品への序章的な印象。
「オープンフィールド」>小さな階段を上がって、室に入ると、青に満たされた空間。遠いも近いもなく、明るくも暗くもなく、ただひたすら青い。人のシャドウと、若干傾斜になった床が、数少なく感じられる5感であった。
「オープンスカイ」>3作品の中では最も大規模でタレル氏の定番。漆喰の、大空間の天井にポッカリと四角い穴が開いて、その先に空が見える。これほど空の青さを純粋に楽しめる場所は少ない。部屋の四方を囲むベンチは大理石作りだが不思議と暖かく、いつまでも空の青さを味わっていられる。夕方にかけての空の変化を時間の都合でみることができず残念だった。
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そして、最後はウォルター・デ・マリア室に。作品名は”タイム/タイムレス/ノータイム”。全く意味は分からないが、とにかく神々しさを感じる空間だ。巨大なコンクリート室に、部屋と同幅の階段が伸び上がり、踊り場に直径2.2m、花崗岩製の球が緊張感を持って置かれ、部屋の周りは金箔を施された多角柱が所々に飾られている。コンクリートの床に石質の球なので、接地面は可能な限り小さく見えて、その球の重力に対して床が痛々しく感じられるほどである。そして曲面の天井からは自然光が降り注ぎ、しばらく眺めていると球や柱の影がわずかながら、しかし刻々と変化している。自分一人の時はその空間と素直に対峙する事ができるが、他の人が入りしゃべり出すと、とたんに空間の雰囲気がかき乱されたようになる。その変わり具合も、この空間の持つ繊細さを醸し出してくれるのだ。
ちなみにこの作品を案内してくれるおばさんがとっても楽しげな顔で、こんな事を言っていた。
「この作品の意味は分かりません。でもこれを観た人の表情を見たり、様々な感想を聞いたり、誰もいない時を狙って来る人がいたり、空間の雰囲気が天候や時間や入場者によって変わったり、いろいろと面白いんです。」
案内のおばさんが、この現代美術を一番堪能しているようにみえた。
下の写真は近くの海で展示されているウォルター・デ・マリアの「見えて/見えず 知って/知れず」。このような球が地中美術館内にも置かれているのです。
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何度か各部屋を行き来したり、カフェでお茶を飲んだりして、地中美術館を後にする。帰りの海で流木を発見した。一連の現代美術を見た後では、この樹木もまるで意図を持って横たわった「作品」に見えてしょうがなかった。おしまい。
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by ikkoikko2 | 2005-05-28 19:09 | 旅行


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